MiG-29 Fulcrum 9-12 1/48 G.W.H
MiG-29はF-15やF-14と言った西側戦闘機に対抗すべく開発された機体で、初期量産型であるタイプ9-12の初飛行は1977年です。
1983年末にソ連空軍へ実戦配備が始まり、当初はワルシャワ条約機構加盟国向け輸出も順調に進みました。
その後ソ連崩壊の後、戦闘機のセールスにおいてはスホーイが俄然有利な状況へと変わり、MiG-29の初期型を運用していた
諸外国は後継機選定においてMiGを選択することは皆無と言えるような状況となってしまいます。
そのような苦境に至りながらもフルクラムシリーズはバージョンアップをはかり、9-13、SMT、そしてMiG-35へと発展していくことになります。
作例は月刊モデルアート誌2013年4月号にて掲載されたものです。
1/48スケールではそれまでアカデミーの製品が最もポピュラーなキットでしたが、このG.W.Hの製品がリリースされたことで全スケール通して
決定版キットの座をあっさり奪いとった感があります。
箱を開けてまず目に入ると同時に驚くのは4面のフィンまで一体成型されたミサイルでしょう。
ブリスターパックに別途パッケージングされる扱いに、メーカーの自信が見てとれます。
それもそのはずで、製品開発にはなんと実機設計に携わった方や、ソ連・ロシア機モデリングで日本でも誌面紹介されたモデラーさんが参加されています。
つまり、「モデラー視点で実機開発者が作ったキット」と言っても過言ではない内容というキットなのであります。
製作はニューキットレビューコーナー掲載ということで、あまり手を加えることはせず(と言うか加える部分が殆どない)ほぼストレート組みです。
機体表面には緻密なモールドが彫刻されていますが、少々浅く感じたのでほぼ全てを軽く彫り増ししています。
計器版はメーター1つずつにデカールを貼るというストイックな方式ですので、根気良く作業します。
エンジンはノズル部分だけではなく、本体を機体に乗せるという構成で外板も別パーツ化されています。
フラップ、エルロン、ラダーなどの動翼は全て別パーツ化となり、表情が付けやすくなっているのもありがたいです。
製作ポイントとしては、まず説明書のパーツ番号間違いが散見されることに注意しましょう。
シートに取り付けるエッチングパーツのPE12はプラパーツC63を付けてから取り付けるように。
キャノピーをオープン状態にする場合、ステーとなるパーツC33はそのまま使うとキャノピーが不自然に持ち上がった角度になるので調整しましょう。
機体尾部のエアブレーキはオープン状態で組む場合、アクチュエーターのパーツG14/G15は取り付け位置の指示が間違っています。
文字で説明するのが難しい部分なので写真を参考にしていただければOKです。
水平尾翼は取り付け基部の軸が強度面で不安なので、金属線を挿入して補強してから取り付けています。
機体表面の情報量が多いので、それに負けない程度で脚柱には前後共にブレーキラインを追加してあります。
マーキングは付属のデカールを使用しましたが、ラダーのロシア国旗カラーは塗装で再現しています。
デカールが少々馴染みにくいので、ディテールに馴染まないという判断から塗装仕上げとしました。
塗装は説明書に準じて調色していますが、グリーンは少々明るい感じがするかもしれませんので各自の好みで緑を強くしたりしても良いかと思います。
ソ連崩壊に向かう時期の機体ということもあるので少々くたびれ気味なイメージで退色表現も加えています。
スミ入れはブラウンをメインにしています。
製作してみて感じた事は、とにかくスケールモデルというカテゴリならではの実物に対する再現度の高さでしょうか。
ディテールにおいては文句なく全スケール中ナンバーワンですし、エンジン本体の再現や一体成型のミサイルなど
金型技術のクオリティにも目をみはる部分が多々あります。
「エンジンを積むと胴体が取り付けられない」などという本末転倒な事態もないですし、非常にハイスペックなキットと言えるでしょう。
ただ、それだけの内容を持つが故に製作する上では少々難しいプロセスもあるかと思います。
そんな理由から初心者にもオススメ!とは言えませんが、いくつか製作した経験があるなら是非チャレンジしていただきたいキットです。
キット開発に加わったモデラーの毛 羽飛氏とは個人的にも交流があり、このキットの内容や製作においての感想などアドバイスさせていただきました。
次作の9-13ではその意見も取り入れられると嬉しい所です。
次のバリエーションキット、9-13も製作しますのでお楽しみに!